#30 田中大貴、スタートラインへ

Posted on : April.07.2023

ハーレーのチームライダーである田中大貴が、ワールドサーフリーグ(WSL)のクオリファイングシリーズ(QS)アジアリージョンで3位にランクインし、今年のチャレンジャーシリーズ(CS)への参戦が決定しました。大貴にとって初めてのCS出場。そんな新たなスタートラインに立った大貴に、ここに至るまでの経緯やこれからの意気込み、目標などについて聞いてみました。

CS進出を決めた舞台

-3月に行われたQS3,000イベント、ホワイトバッファロー日向プロで準優勝して、2340ポイントを獲得。これが大きなリザルトとなり初のCS出場を決めました。この試合を振り返って、準優勝できたポイントはなんだと考えていますか?

「この日向という場所はサーフィンを始めた頃から通っていたポイントだったので、波を誰よりも知っていたという点は大きな要因でした。ただ、何より日向のローカルサーファーや自分の地元である福岡県から多くの方が会場まで駆けつけてくれて、応援してくれたことが今回の準優勝に繋がったと思います」

-これまでいつも安定した戦いを展開してきた中で、この試合で爆発しました。今までとアプローチを変えたりしましたか?

「今回の日向のイベントはCSをほぼ確定する大事な試合だと思っていました。そんな中、この重要な試合に日頃からメンタルトレーニングをやってもらっている専属のメンタルコーチに初めて同伴をしてもらったことが1番大きく違ったアプローチでしたね」

-以前に話を聞いたときは、まずはCSに回れるようになるのが最初の目標ということでした。実際にプラン通りに実現したわけですが、率直な感想をお願いします。また、自分の中でも計画通りという思いはありますか?

「計画を立ててはいましたが、それが計画通りに進んでいるとは実感していなかったんですよ。今からちょうど1年前のAsia Openではクォーターファイナルで敗退し、あと少しというところでCSのチャンスを逃しましたし。ただ、そこで敗退してからの1年間は、あのとき負けて良かったと思えるような1年にしようと思って競技と向き合ってきた1年間だったんです。その結果、念願のCSを掴み取ることができ、素直に夢の舞台で戦えることが嬉しいです」

特徴を活かしたアプローチ

-CSはオーストラリア2戦のあと、南アフリカのバリトー、ハンティントン、エリセイラ、ブラジルと続きますが、どんな戦略を立てていますか?

「コーチの糟谷修自さんがその会場に合うサーフボードのセレクトや現地でのコーチなどを探してくれています。それが何より大きな戦略の一つかなと思います。あと、自分の強みは技術というよりも試合の組み立て方とか波の捕まえ方だと思っているんです。普段サーフィンをしていて、自分が上手いとはあまり思わないんですけど、試合前の練習で調子が悪くても、試合になったら普段のサーフィンよりも調子が良くなるんです。いつもそう。それがわかっているから、試合前に朝練して調子が悪くても凹むことがまったくないんです。中学生で初めて1人でオーストラリアに行ったとき、そこでずっとヒートシミュレーションをやってきたので。残り5分でニードスコアが何点でっていう状況を頭の中でずっと想定しながらやっていました。それが今のヒートの進め方のベースになっているんだと思います」

-側から見ていても、いい波を掴んで、最後まできっちりと乗り切るイメージはあります。

「自分の中でも大きな失敗をしないで、エクセレントを2つ出していくよりも、確実に6点を2本揃えるイメージでやっています。それで相手が失敗したら勝てますし。それが自分の強みだと思っています。WSLでヒートのアベレージスコアが出ていますよね。だったら、そのアベレージスコアを出せばいい。それってだいたいいい選手でも12点とか13点。常にそれを出せるようにしておかないといけないなと思います。ただ、それをずっと続けていても、いいところまで行って負けることがあるので、そこをどうやって突破していくのかっていうのは今後考えていかなきゃいけないところでもあります」

-そこが課題と捉えているんでしょうか?

「なにをしでかすかわからないサーフィンをする人っているじゃないですか。全然ダメなヒートもあるけど、ハマればとんでもないサーフィンで勝ち上がる人。いざというときにそういうサーフィンもできるように、課題として取り組んでいかなきゃいけないと思っています。試合に勝つというよりも、ジャッジにどうアピールできるかっていうところですよね。結局、サーフィンは表現するスポーツなわけなので。ジャッジも人間ですし。表現する側としては、引き出しは多い方がいいと思っています」

-CSのイベント会場の中で特に楽しみにしている場所はありますか?

「スナッパーロックスは昔からすごく好きで、かなり良い波なのですごく楽しみですね」

パワーと安定感を備えた田中大貴のレイバック・ハック。これを武器にCSへと乗り込んでいく

さらなるステップアップのために

-以前に聞いたときはCSに入ってから2、3年でCT入りが目標と言っていました。その想いは今も変わっていませんか?

「CTへの想いは変わっていないですね。今回のCSを獲得できたことは初めて夢へ一歩近づいたなと実感しました」

-CSでは学ぶことも多いと思いますが、どんな形で自分のサーフィンを進化させていきたいと考えていますか?

「負けても良いので全力でぶつけていきたいですね。それがなにより進化への道筋だと思っています」

-ボードチョイスや現地コーチなどのアドバイスをもらっている修自さんとはどれくらいの頻度で連絡を取っていますか?

「多いときは毎日、最低でも週に1回は連絡しています。特にハワイから新しいボードを送ってもらったときなどは、乗ったときの動画を送って、頻繁に相談に乗ってもらっていますね。自分が迷ったら修自さんにアドバイスをもらうようにしている感じです」

-コロナのパンデミックによって海外を回れないときもあり、そんな期間を経てCS出場に繋がっていったわけですが、そのときはどんな取り組み方をしていたのでしょうか?

「自分が信頼しているトレーナーがいるんですけど、コロナのときは週4日くらいのペースで集中してトレーニングをしていました。JPSAも参戦していましたし、自分なりの目標を定めて練習できている感じはありました。自分の体もその間に仕上がってきて、逆に『こうじゃなきゃいけなかったんだよな』とも思えたんです。自分に向き合うことができて、すごく充実していました。自分が変わっていくのがわかったので、それも嬉しかった。自分の理想に近づいている感覚がありました」

-トレーニングについてもう少し聞かせてください。どんなことを重点的にやっているのでしょうか?

「とにかくバランスや体の軸を使うという面では、他のアスリートと比べても優れているらしいのですが、脚力やバネなどの瞬発的なパワーについては上手く使いきれていないと言われています。そこを中心にメニューを組んでもらって、取り組んでいます」

-サーフボードのディメンションを教えてください。

「普段使っているのは5’ 8 1/2”×18 3/8”×2 1/4”で、24.5リットルくらい。身長と体重は169cmの67kgです。クリス・ギャラガーのボードはソウルメイトっていうモデルがお気に入りで、オールラウンドに使えるボード。千葉とか日本の波にも合っています。反応がすごくいいモデルもあるんですけど、自分としてはそれよりもボトムで粘りのあるボードの方が好きですね。自分のサーフィンの特徴だと思うんです。キレのあるサーフィンというよりも、溜められるサーフィンというか。どれくらいドライブするかっていうのを重要視しています」

-フィンのセッティングはどうですか?

「前まではラージのフィンを使っていたんですけど、ラージのフィンのときサーフィンにメリハリがないような気がして…。体の全部の力を使ってターンしていたというか。本当はそんなに力はいらないはずなのに。それでミディアムに変えたんです。そうしたらキレが増しました。もともとボードはドライブ性が高かったので、組み合わせとして良いのかなと思ってミディアムのフィンを使っています」

サーファーとして、コンペティターとして

-今後のプランと、コンペティターとしての最終的な目標を教えてください。

「最終的なゴールはもちろんCTにクオリファイすること。そのためには、一つ一つのイベントにフォーカスして、そのイベントに勝つためにどうやっていくかという感じで取り組んでいます。目の前のことに集中してコツコツと積み上げていくっていうのは、子供の頃からやってきたこと。だから、細かく何年後にこうしようという形ではプランを立ててはいないですね」

-セカンドキャリアを考えたとき、どうやってサーフィンと関わっていきたいと思っていますか?

「サーフィンが好きなので、ずっと関わっていきたいなとは思います。実はそれ以上あまり考えたことがないんですけど、自分がサーフィンをしていて楽しいから、その楽しさをどんな方法でもいいので伝えていきたいなとは考えています。前に地元の福岡でサーフィンのイベントをやったんです。修自さんにも来てもらって。そのとき、こんなにキッズサーファーがいるんだって驚いたんですよ。それで、逆に自分が小さい頃にそういったイベントがあったらなぁと思ったんです。そういう機会をもっと作っていけたらいいなとは考えています」

Go,Daiki!!

田中大貴選手オフィシャルインスタグラム:https://www.instagram.com/daikitanaka0614/

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