#82 関本海渡、ポルトガル・ナザレへ  第三章「心身を整える」

Posted on : November.18.2025

昨年、世界に名だたるビッグウェーブスポット、ポルトガルのナザレに挑戦した関本海渡プロ。日を重ねるにつれ冬の気配が濃くなるこの時期も、来るシーズンに向けて着々と準備を進めています。今回はナザレチャレンジの第三章として、心と身体に焦点を当ててストーリーを展開していきます。


マインドとフィジカルの両面

昨年、初めてポルトガル・ナザレの波に挑んでから、十ヶ月が経った。
あの巨大な波の中で、自分の身体がどう動いたか。どこまで通用して、どこが足りなかったか。
関本海渡は振り返る。

「ワイプアウトしたあとに冷静でいないといけない。そこは、まだまだ向上させる必要があると思う。体力的には悪くなかった。通用したかなと感じていますけど、トゥインでは持ち手を掴んだまま引っ張ってもらう必要があるから、上半身はもっと鍛えたい。特に握力。サーフィンだけでは鍛えられない部分だからです。」

下半身については、スノーボードの感覚に近い。足がボードに固定され、スピードの中でバランスを保つ。冬の間にスノーボードを少し滑ってきた経験が、そのまま波上での感覚につながった。
「スノーボードで培った感覚は生きた」と、海渡は言った。

ナザレでの挑戦以来、日本ではまだトゥインサーフィンをしていない。
「次にナザレに行く前に、日本でジェットスキー用の特殊小型船舶免許を取って、ペドロとどこかで練習したい」
そう話す声は冷静だが、すでに次の準備が始まっていることを感じさせる。

独自の生きたトレーニング

心肺機能の向上は、大波に挑むための基礎体力だ。だが、数字を追うようなトレーニングとは少し異なる。
「泳ぐトレーニングはしているが、苦しいと感じた瞬間に頭で考えてしまう。そこが難しいところです。苦しくても落ち着けるメンタルが必要で、メンタルと心肺機能は繋がっていると感じます。頭の中がクリアじゃないと、本当に苦しくなる。脳で考えると酸素をすごく使うとも言われていて、そこがおもしろいところです」

息を止める練習も、数字ではなく感覚を重視している。
「陸上で3分くらいは止められたらとは思っていますけど、結局は海の中でのことだから。動かない状態ならできるかもしれないけど、実際の海では違う」
その言葉には、ナザレに挑んだ者にしかわからないリアリティを感じさせる。

日本では、常に大きな波が立つわけではない。だから、陸でのトレーニングが欠かせない。
海渡は山を歩き、往復1時間かけて下半身を鍛える。泳ぎは心肺機能を鍛えるために3kmをペースを変えながら泳ぐ。懸垂で握力と体幹を、腕立て伏せで上半身を鍛錬する。週に数回、自重を中心に体を動かすルーティンだ。
「移動のときに坂道に差し掛かると立ち漕ぎで自転車を漕いだり、日常の中で追い込むこともやっています。SUPも体幹を鍛えるにはとてもいい。最近はあまりできていないけど、効果はある」
そこにあるのは、特別なジムのメニューではなく、生活の中で身体を鈍らせないという強い意志だ。

トレーナーをつけることも考えたというが、いまは独自のスタイルを貫いている。
「話を聞いたり、少しアドバイスをもらったりはしましたけど、いまは自分でやっている」
自分の身体を最もよく知っているのは、自分自身。そして、ナザレの波の圧力や怖さを知っているのも、自分自身。そうはっきりと言わずとも、海渡の話からはその確信が伝わってくる。

常に大きな波と共に

実際の波の上での練習について尋ねると、海渡は少し考えてからこう言葉を選んだ。
「大きな波に乗っていないと感覚が鈍るから、なるべく間を空けずにサイズのある波に乗るようにしています。だからフットワークを軽くして、地元以外でも大きな波が立ちそうなときは行けるようにしたい」

先日訪れたバリ島では、ウルワツやパダンパダンでサイズのある波に乗った。
「乾季のスウェルが入ってきて、ウルワツで8〜10フィート、パダンパダンで4〜6フィートくらいあったかな」
その経験を日本に持ち帰り、次の海へと繋げていく。

「これから国内でもトレーニングを続けて、ジェットスキーやトゥインの練習をして、またナザレに臨みたいと思う」
淡々とした言葉の中に、確かな決意がある。
波を待ちながら、海の外で心身を整える時間。その静かな積み重ねが、次の大波、来季のナザレへと繋がっていく。







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