コンペでの成長が著しい2006年生まれのヤングガン、渡邉壱孔プロ。特に今年の活躍は著しく、世界にその名を轟かせたと言って良いでしょう。今回のインタビューでは、その好調の背後に隠された壱孔プロの取り組み方やメンタル面での変化などに迫ってみました。
自分の能力をいかに発揮できるか
――2024年は5月にエルサルバドルで開催されたワールドジュニア・サーフィン・チャンピオンシップで4位に入賞。カッパーメダルを獲得して、8月にモルディブで行われたアジアサーフィン選手権でも3位と好成績を残しました。自身でこの好調の理由はなんだと考えていますか?
「今年はハワイから遠征が始まって、海外の選手と切磋琢磨することで自信が出てきました。どの選手と比べても自信を持っていると自分自身で思っていて、100%の能力を発揮できれば負けないと感じています。技術の面だけを考えたら上手い選手はたくさんいるので、自分の場合はいろんな技のバリエーションで勝っていかなきゃいけない。だからこそとにかく良い波を見つけて乗るように心がけています」
――良い波を見つけるための戦略が見えてきたのでしょうか?
「そうですね。ヒートの時間を有意義に使うことができているという感じですね。かなりヒート数をこなしてきているので、試合の進め方が上手くなってきたのは間違いないと思います。ヒート前に時間帯によってこういうことをやろうということは自分自身の中で整理されていて、例えばジャンクなコンディションで波数が多いときは、ヒート時間を3分割もしくは4分割して、とにかく多くの波に乗るようにするとか。サーフィンの大会は2本のライディングのトータルスコアで勝負が決まるので、逆に波数が少ないときはヒート時間を2分割して、その中でベストな波だけに乗るようにしています」
――波数が少ないヒートのときは、一つの失敗が勝負を大きく左右すると思いますが、そのプレッシャーは感じますか?
「大会になって応援されていると、プレッシャーをまったく感じなくて、逆にワクワクしてくるんです。QS(クオリファイングシリーズ)になってくると賞金もかかってくるので、勝たないといけないという気持ちが出てくるんですけれど、それでも試合が楽しいという感覚は昔から変わらないですね」
――あともう一歩で頂点。なにが足りないと考えていますか?
「ずっと日本でサーフィンしているので、リーフブレイクが苦手なんですよ。経験値が足りないので、来年からはちょっと無理してでもオーストラリアとかに移住して、経験を増やしていかないといけないのかなって思っています」
さらなる高みを目指して
――体つきという部分では、日本人でもチャンピオンシップツアー(CT)で戦えるということが証明されています。壱孔選手はまだ体が発展途上だとは思いますが、その部分で取り組んでいることはありますか?
「今年からウエイトトレーニングを始めているんですけど、暴飲暴食?しながらやっていたんですよ(笑)。体重を増やしたくて。でも、それが間違っていたのかな。世界戦に出場する選手を決めるためのジュニアオープンという大会があったんですけど、そのとき体が全然動かなくて。体が重いというか、全然捻れなかったんです。それでも世界戦に出場することができて、そのときに他の選手とトレーニングについて話していたら、ウエイトトレーニングだけじゃなくて、エアーの技術を上げるためにトランポリンをやっていると聞いたんです。エアーのときに自分が回転している速さに目がついていかないと絶対に決めることができないらしくて。今後はトランポリンとかも練習のメニューに入れていきたいとは思っています」
――そうやって世界の世代トップと戦うことで、学ぶことが多いようですね。
「3年連続で世界戦に出場していたこともあって、やっぱり『お前、去年もいたよな』という話にはなります。そこでいろんな情報が共有できていますね」
――8月のアジアサーフィン選手権では、同じHurleyライダーの河村海沙プロが代表コーチとして帯同しました。河村コーチからはどんなアドバイスやコーチングをしてもらったのでしょうか?
「海沙くんには小学生のときからずっとコーチングをしてもらっているので、とても信頼しているんですけど、アジアサーフィン選手権のときは、最初の練習の段階で自分の感覚とサーフボードが全然合っていなかったんです。感覚が合わないままラウンド1のヒートを戦ったあと、海沙くんから『こっちの方が良いんじゃない?』って乗るつもりじゃなかったボードを勧めてもらって。そうしたらそのボードがすごく調子良かったんですよ。あと、大会会場がポイントブレイクだったので、ヒート前に相手選手のマークの仕方とか、海沙くんに全部指示してもらいました。自分の得意なエアーの波や風向きがあって、その辺も海沙くんはわかってくれていましたし。一発の技だけだとなかなか高得点が出なかったので、コンビネーションで攻めるようにアドバイスをもらったりもしていました」
――以前と比べて、試合におけるエアーの重要度が高まっています。それは自分にとって有利に働いていると感じますか?
「ヒートの残り時間がわずかのときでも、エアーリバースを決めるだけで高い点数が出せますよね。例え波が良くなかったとしても。だから残り2分で6点のスコアが必要でも、まだ勝てるというメンタルにはなれます。決めるだけの自信もありますし」
――日本代表を背負い、また日本チームのキャプテンとしても出場することの重みはどう感じていますか?
「去年と違って、今回は話したことのない選手がけっこういたんです。だからチームとしてまとめるのが大変でした。他の試合は個人戦だけど、世界戦になると団体での戦いでもあるので、キャプテンとして自分がどんなに悔しくても下を向いちゃいけないですし。もしかしたらキャプテンっていう役割はあんまり向いてないのかもしれない(笑)」
コンペへの強い思い
――今使っているボードのディメンションを教えてください。
「5’9 1/2” x 18.40” x 2.25”で、24.5Lです。身長が173cmで、体重が62kg。次に届くボードが24.8L。大きなボードを使うとライディングがパワフルになってくるので、どんどんボードを大きくしていこうと思っています。そして、それに負けないように足腰を鍛えていきたい」
――ボードの特徴は?
「ロッカーの強いボードの方が自分には合っているのかなと思っています。あとはシングルコンケーブも特徴の一つですね」
――ロッカーが強くて、シングルコンケーブのボードは、日本の波との相性はどうですか?
「最初、みんなに『日本の波に合わないよ』って言われたんですよ。でも、ボリュームを上げたらボードはちゃんと走るし、日本の波でも自分にはすごく合っています」
――以前、別のインタビューで、いずれはフリーサーファーとしてやっていきたい、と言っていましたが。
「そのときから心境の変化はありました。選手としてやっていくのは26歳くらいかなとは考えていて、その前にロサンゼルスオリンピックには絶対に出たい。そのためにウエイトトレーニングしている部分もあります。26歳以降は、サーフィンの大会を運営する側にまわりたいと考えています。今、サーフィンの試合は1ヒート15〜30分じゃないですか。その間に波が来ないこともある。なので、格闘技みたいに3分1ラウンドとか、短い時間で決着がつく試合を運営してみたい。それならサーフィンをしない人でももっとサーフィンの試合を楽しめるんじゃないかなと思います。脂の乗った選手を呼んで、マンオンマンで戦ってもらう。その場合、会場はウェーブプールしかあり得ないですけどね。最終的な目標としては、サーフィンを流行らせたいと思っています」