現在、夏真っ盛りのオーストラリア。その中でもサーフィンの中心地と言われるゴールドコーストでサーフィンを中心として生活を送っているのが、Hurleyライダーの馬庭彩選手です。神奈川県茅ヶ崎市出身の彼女がなぜオーストラリアに移住したのか、そこで得たものはなんだったのか。今後の目標も含めてインタビューしました。
さらなる成長のために
―まず、オーストラリアに来た時期ときっかけを教えてください。
「2019年の4月頃、中学校を卒業したのと同時でした。きっかけは、どこの高校に行こうか迷っていたときに、若い頃に世界を知る価値とか、英語を話せるようになることの大切さとか、毎日サーフィンできる環境に身を置くことの重要性とかを感じたからです。自分自身のそういった気持ちと、母の推しがあって決めました」
―現在の毎日のルーティンを教えてください。
「スーパー朝イチに起きて、サーフィンを1ラウンドやって、7時頃に朝ごはんを食べて、もう一度2ラウンド目のサーフィンに向かいます。その後はバイトのシフトが入っていたら働いてから、夕方にもう一度海に入ります。あと、近くにプールがあるのでプールトレーニングをするのと、佐藤秀男トレーナーからもらったメニューに従ってスプリントトレーニングと筋トレをするのが日課。この生活を繰り返しています。今シーズン、QSをまわってきてここままじゃダメだってわかったので、自分の限界のルーティンを作り、このルーティーンを続けるようにしています」
―いつから続けているのですか?
「韓国の試合(11月17〜19日で行われたQS3,000のSiheung Korea Open)が終わってからです。それからずっとやっているので、体はだいぶ絞れてきていて、サーフィンも少しずつ上手くなっているのを実感しています」
―このままではダメだと思った具体的な要因は何だったのでしょうか?
「サーフィンの試合にはライディング技術の他にも、戦術とか波や試合の流れへの対応能力が必要だと思うんですけど、(韓国で行われたような)ウェーブプールの試合の場合、戦略は関係なく純粋な技術勝負になります。そこでも優勝まで全然届かなかったということは、まず技術的にダントツで上手くならないといけないと思ったんです。だいぶ危機感を持ちました。それには毎日、時間を無駄にしないようにしようって思っていますね」
―戦術の部分ではサーフコーチから具体的なアドバイスは受けているのでしょうか?
「オーストラリア人のマイケル・クリスプ(通称クリスピー)からコーチングを受けています。戦術に対する知識が豊富で、聞いているだけでも驚かされますね。クリスピーからメンタルケアもしてもらっていて。練習前にするルーティン、例えば流れを読む、風を見る、地形を見る、他のサーファーがどういうライディングをしているか観察するといったこともクリスピーと話し合いながらやっています」
自分の長所を伸ばす
―オーストラリアで暮らし始めて、文化的に一番異なると感じる部分はどこですか?
「高校や大学に通って一番違うって感じたことは、個性を大事にすること。それはサーフィンにも当てはまることかなって思います。日本の場合、髪の毛の色や服装など、統一感を強調した教育じゃないですか。でも、オーストラリアの場合は、全部自由で、個性を評価される。コーチの教え方も、悪いところを修正することもあるんですけど、どちらかと言えば一番良いところを見つけて伸ばしていってくれるやり方です。そのあたりは文化の違いだなって感じます」
―彩選手の場合はどこがさらに伸ばすべきスキルだとコーチから言われているのでしょうか?
「波のトップでのレールワークとパワーです。あとは日頃の生活も褒められました(笑)。真面目って見えるみたいです。でも、悪く言えば真面目っていうのは頑固で、パワーはキレが足りないとも捉えられるじゃないですか。前まではそうやってネガティブに考えていたんです。でも、そこがストロングポイントだって言われて、そこを伸ばして、メンタルを強化していく方向に持っていくことが大切だと感じました」
―では、技術的なウィークポイントはどこだと思っていますか?
「縦の動きかなって思います。オーストラリアに来てからカービングを習得しようと思って、そこばっかり練習していたら縦の動きができなくなっちゃって(笑)。確かにカービングは褒められることが多いんですけど、やっぱりそこに縦の動きを入れていかないとエクセレントスコアは出せないので。あとはさっきも言った部分ですけど、もう少し体を絞って、ライディングにキレを出すようにしないとって思っています」
―パワーを失わないでキレを出すにはどうしたら良いと思っていますか?
「体を絞るっていうことは筋肉を落とさず、脂肪を落とすってことなんです。そうするためにはトレーニングはもちろんなんですけど、1日2食にして糖質を減らすとか、食事制限が必要になってきます。タンパク質は毎日、佐藤先生と自分で決めたグラム数を摂るという目標もあります。食事に関しては佐藤先生からのアドバイスもありますし、自分でもけっこう勉強しました」
―元々、オーストラリアに行くときの目標は何だったんでしょうか?
「一番の目的はサーフィンが毎日できる環境に身を置くこと。それで結果を残すことが目標でした。あとは英語を話せるようになること。具体的な結果という部分では、全高校のサーフィンプログラムで一番になろうと思っていました。これは達成出来たので良かったです。あと、その頃はコロナ前だったのでクオリファイイングシリーズ(QS)から直接チャンピオンシップツアー(CT)に行けるシステムだったんですけど、QSの試合では毎回セミファイナルかファイナルに行けるようにっていう目標を持っていました」
世界を目指す
―オーストラリアのサーフィンに対する理解度などは、どんな部分で日本と異なると感じていますか?例えばビーチライフなどはまったく違うと思うんですけれど。
「日本では学校に行くとサーフィンを知らない子もいるんですけど、オーストラリアはみんなが知っていて、QSとかCSの仕組みも一般の人でも理解している。全員が一度はサーフィンを経験したことがあるんじゃないかなって感じます。サーフィンをしていない友達でも、毎日のようにビーチに行って、海に触れていたり。サーフィンが国技として認められているというのは感じますね」
―オーストラリアで生活をしている中で、日本のサーフシーンについて感じることは何かありますか?
「サーフィンっていうスポーツ自体の知名度がまだまだ低いなって感じます。オーストラリアではサーフィンと関連していない一般企業の人もサーフィンのことを知っているんですよ。それでアスリートを応援しているし、サーフィン自体を愛している。でも、日本にも良いサーファーがいっぱいいるので、企業の人たちにももっと知ってもらいたいって思うし、日本人サーファーがもっと成長できる機会が増えればいいなって思います」
―オーストラリアでサーフィン修行をして、一番良かったこと、伸びた部分はなんだと感じていますか?
「思考が広がりましたね。前は固定的な思考で、みんなから言わせると私は頑固らしいんですが、英語を話せるようになってからは、オーストラリア人の意見を聞いて、前と比べて自分のアイデアや思考が広がるようになったと感じています。あと、ゴールドコーストでサーフィンしていると、みんなサーフィンが上手いので、自分のサーフィンに満足することがないっていうのも良いことかなって思います。カービングとかチューブとか日本ではなかなか練習できないライディングについてはすごく成長したなって感じています」
―今後の活動はこのままオーストラリアをベースにするつもりですか?それとも日本に戻ってくるつもりですか?
「今通っている大学が卒業まであと2年半あって、大学は絶対に卒業したいので、それまではステューデントビザでオーストラリアにいるつもりです。そのあとはまだどこに行くかわからないですね」
―2024年の目標を教えてください
「CSにクオリファイすることです。CSに入るときには、CSで勝てる技術と戦術を身につけていたいですね。それでクオリファイしたら、そのままランキング5位以内につけて、CTに入りたいと思っています」