#43 1歩1歩、前へ―― エリート“風”雑草ゴルファー・尾崎慶輔の進む道

Posted on : March.22.2024

ゴルフの強豪校・明徳義塾高から東北福祉大に進み、プロゴルファーに。一学年下の松山英樹と同じルートでプロ入りした尾崎慶輔だが、「自分はエリート“風”なだけです。学生時代もプロになってからも、周りとの実力差を感じている雑草ゴルファーです」と笑って話す。昨シーズンは、最少ストロークタイ記録となるハーフ「28」や史上2人目の2週連続ホールインワンを達成した尾崎に、これまでのゴルフ人生と今シーズンにかける想いを聞いた。

――明徳義塾高、東北福祉大とゴルフ強豪校出身の尾崎プロは、子どもの頃からプロゴルファーを目指していたんですか?

ゴルフ好きの父親に連れられて練習場やコースに行くことはありましたが、中学時代はサッカー部に所属していました。3年の最後の大会が終わって時間ができたこともあり、“ノリ”で競技ゴルフに出場したことはありましたが、当時はプロゴルファーになりたいとは思っていませんでした。

明徳義塾高のゴルフ部に入ったのは、どうしてもゴルフがやりたかったわけではなく、早く家を出たかった、寮生活をしたかったというのが一番の理由。正直いうと他のスポーツでもよかったんです。

ゴルフ部に入って感じたのはレベルの高さ。周りはプロを目指すような部員ばかりでしたから、趣味でゴルフをしていた自分とは比較にならないくらい上手かったです。しかも、付属の中学には当時から注目されていた松山英樹選手がいましたし、プロになるのは無理だと思っていました。

――本格的にプロを目指したのはいつ頃ですか?

高校2年の終わりに全国大会に出場できた辺りから真剣に取り組み始めました。本格的にゴルフをやるなら大学は強豪校に行きたかったので東北福祉大へ進学することに。しかし、そこでもレベルの差を痛感することに。今ではプロとして活躍している選手もたくさん在籍していましたからね。そんな中でも2年生の時にレギュラーになることができ、その辺りから本気でプロを目指そうと思いました。

――大学卒業後は3回目のプロテストで合格しましたが、プロになった後は出場機会に恵まれない時期が続きましたね。

ゴルフ場でキャディのアルバイトをしたり、研修生をしながら練習していました。自分がテストに受からず、合格後もなかなか試合に出場できない中、同学年の選手たちがシード権を獲得してツアーで活躍する姿を見ていました。今振り返ると、その頃が一番しんどい時期でした。ゴルフを辞めようと考えたこともありましたが、「まだ何も成していない。失うものは何もないんだからやれるところまでやろう」と思っていました。

――その後は試合に出場する機会も増え始め、20-21シーズンは「アベマツアー」(下部ツアー)にフル参戦。また21年にはツアー外競技の「JOYXオープン」でプロ初優勝を飾りました。

コツコツ練習してきた成果が徐々に出始めました。優勝した前年の「JOYXオープン」は、6人のプレーオフを経験していました。1ホール目でバーディを決めた選手が優勝したのですが、その印象があるので「1ホール目でバーディを獲らなければ優勝できない」と考えていました。優勝争いのプレッシャーの中で打ったティショット、セカンドショットはイメージ通り。2打目をピンそばに付け、バーディを獲って優勝しました。

勝ったことが自信になったというよりも、プレッシャーの中でバーディを狙ってバーディを獲ったこと、勝ち切れたことが自信に繋がりました。

――22年はレギュラーツアー前半戦の出場権を獲得。レギュラーツアーに出て感じたことは?

予選を通過できない試合が続き、実力差を感じていました。アベマツアーに出始めた頃と同じ気持ちですね。ただ、ショットは戦えないレベルではないと思っていました。課題はパッティングです。バーディチャンスにつけても決め切れない、アプローチを寄せてもパーを拾えないゴルフが続きました。

また、この年はレギュラーツアーとアベマツアーに出ていたので、体力的にもキツかったです。自分にとってはどちらも大事な試合。レギュラーツアーで結果を出したいし、アベマツアーで成績を残さなければいけない。どの試合も全力で戦っていたので、精神的にも疲れたシーズンでした。

――23年も前半戦のレギュラーツアーとアベマツアーに出場しました。5月のレギュラーツアーの大会では初日にハーフ「28」をマーク。首位スタートした試合もありました。

前年の経験を活かし、メリハリをつけてシーズンに臨もうと考えていました。春先はあまり調子が良くなかったのですが、予選は通過できている状況。悪いながらも予選は通っていたので、「調子が上がってくればチャンスはある」と感じていました。

「28」を出した時も本調子ではなく、気持ちよく振り切れてはいなかったんです。ただ、あの日はパターがめちゃくちゃ入ってくれました。グリーンの外からカップインすることもあって、途中5連続バーディもありました。「どこからでも入るんじゃないか!?」という感覚でした。

――しかし、これからという時にワキ腹を痛めてしまいました。手応えを感じ始めていただけに悔しかったのでは?

ワキ腹に違和感を覚えたのは、ハーフ「28」を出した翌日のラウンドでした。振った時に痛みを感じましたが、そのままプレーを続けました。翌週の試合でさらに悪化し、痛み止めを飲みながらプレーを続けました。次の試合では、痛みに耐えられずに途中棄権しました。精密検査の結果、肉離れと診断されました。

休んで治療した方が良いのは分かっていましたが、「万全の体の状態で試合に出ている選手なんていないんだから自分も出なけば」、「来シーズンのために結果を残さないと」と試合に出続けていました。

肉離れは秋には治ってきましたが、無理にゴルフをしていせいでアイアンが30y曲がるほどスイングがおかしくなった時期もあります。そんな調子では結果を残せないですよね。

――今シーズンは再びアベマツアーからレギュラーツアーを目指すわけですが、意気込みを聞かせてください。

昨年の反省を踏まえ、今年はトレーナーさんにケアしてもらいながら、食事面にも気を配ってシーズンを過ごそうと考えています。

自分は学生時代もプロになった後も、劣等感を抱えながらゴルフをしてきました。高校、大学は強豪校出身ですが、エリート“風”なだけ(笑)。雑草ゴルファーだと思っています。相変わらずパッティングに課題はありますが、1歩1歩前に進み、早い時期にアベマツアーで優勝すること、そして再びレギュラーツアーの舞台に立つことを目標に頑張ります。


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