#35 タイガー・ウッズを追い詰めた男、横尾要の現在地

Posted on : September.15.2023

学生時代から注目され、プロ入り後はレギュラーツアーで通算5勝を挙げた横尾要プロ。
昨年7月に50歳の誕生日を迎え、現在はシニアツアーで戦っている。長い手足を活かした安定したショットと巧みな小技でアメリカツアーにも参戦した日本男子プロのトップランナーであった彼に、現在の主戦場となるシニアツアーの印象やレギュラーツアー時代の思い出、今後のゴルフ人生について話を聞いた。

―昨年8月の「マルハンカップ太平洋シニア」でシニアデビュー。現在2年目のシーズンを過ごしているわけですが、シニアツアーの印象はいかがですか?

「レギュラーツアーで一緒に戦ってきた先輩方がたくさんいて楽しいです。ただ、2位に入った試合はありますが、これまでは自分の成績が思うように出ていないというのが正直なところ。シニアツアーは強い選手がたくさんいて、レベルが高いことはデビュー戦の前から分かっていましたが、やはり簡単には勝てないです。
 僕は元々、飛ばすプレーヤーではなく、グリーン周りとグリーン上で勝負してきました。昔から飛距離には全く自信がありません (笑)。なるべくボギーを打たず、少ないチャンスをモノにしてスコアをまとめていくタイプなんです。レギュラーツアー時代と同様、このプレースタイルで戦っていき、一回くらいは優勝したいと思っています。」

―横尾プロは、学生時代から片山晋呉プロ、宮本勝昌プロとともに“日大三羽ガラス”と呼ばれ注目を集めていました。片山プロ、宮本プロもシニアデビューしていますが、2人の存在は刺激になりますか?

「2人はいまでもレギュラーツアーのシード選手としても頑張っていますから、僕とは差があります。しかも、宮本は今年5月の「全米シニアプロ選手権」で10位という成績を残しています。アイツらは本当にすごいです。
 僕たち3人の中では、最初に勝つのはいつも宮本なんです。日大時代は、宮本が91年の「日本アマ」で優勝して、僕が93年の「日本学生」で優勝し、翌年に晋呉が同じく「日本学生」で優勝しました。プロ入り後は、全員98年に初優勝しているのですが、宮本が4月の「つるやオープン」、晋呉が8月の「サンコーグランドサマーチャンピオンシップ」、僕が11月の「アコムインターナショナル」でした。そして、シニアツアーでは晋呉と僕はまだ勝っておらず、宮本が今年の「ファンケルクラシック」で初優勝を挙げています。学生時代もレギュラーツアーもシニアツアーでも、全て宮本が最初に勝っているんです。ただ、最終的に一番多く勝つのは晋呉なんですけどね(笑)。」

―ところで、横尾プロといえば「ダンロップフェニックス」の活躍を思い出します。02年は通算4勝目を挙げ、05年はタイガー・ウッズと4ホールのプレーオフ。惜しくも敗れましたが、あの戦いを今でも記憶しているゴルフファンは多いと思います。「ダンロップフェニックス」は今でも世界的なプレーヤーが出場することでも知られていますが、横尾プロが優勝した02年は、タイガーをはじめ、セルヒオ・ガルシア、ジャスティン・ローズ、ダレン・クラークら、世界のトップランカーが今以上に多く参戦していました。

「確かに今でもその話題を振ってくださる方がいるのですが、「プレーオフでタイガーに勝ったんですよね?」と勘違いしている人が結構多いんです(笑)。僕が優勝した大会とタイガーとプレーオフをして負けた大会がごっちゃになっているんですね。
当時を振り返ると、タイガーとプレーオフで戦うという経験はなかなかできるものじゃないので、ツイてたなと思います。タイガーとの思い出でいえば、02年に優勝した時、僕のキャディがたまたまタイガーと仲が良かったので、18番のフラッグにサインをもらってくれたんです。タイガーのサインと「Congratulations!(おめでとう!)」と、あと何か英語で書いてあります(笑)。それは今でも家に飾ってありますよ。」

―「ダンロップフェニックス」で優勝した02年とその前年の01年は、米男子ツアーを主戦場にしていました。海外ツアーの経験はその後にプラスになりましたか?

「2000年のファイナルQTにチャレンジし、01年シーズンに出られることになりました。シーズン当初は移動がスムーズで、飛行機に乗る場合は15分くらい前に空港に行けばよかったのですが、状況が一変したのは9.11の同時多発テロ以降。僕たちツアープロは転戦するため、飛行機のチケットは片道分しか持っていません。しかも、アメリカ国内では僕は当然外国人です。「片道切符の外国人」ってテロリストと同じなんですよ。ですから、飛行機に乗るのが非常に大変で、2時間以上前に空港にいかなければいけなくなりました。
空港で少しでも悪い態度を見せれば、「飛行機に乗せないぞ!」と言われてしまいますから、何を言われても我慢しなければいけません。全てが自分の思い通りにいかない中で生活していたので、かなり忍耐強くなりました。正直、米男子ツアー参戦前に日本でプレーしていた時は、ちょっと天狗になっていた部分がありましたが、日本ツアー復帰後は人間的に大人になった気がします。もちろん、それ以降もプレー中にうまくいかずにイライラすることはありましたが、感情を抑えられるようになった部分はありますね。」

―最後に、今後の目標をお聞かせください。

「今はシニアツアーで頑張ることが第一。直近の目標は、今シーズンのシニアツアーで賞金ランキング30位以内に入って来季のシード権を獲ることです。試合に出られる限り、競技を続けていきたいですね。
ただ、シニアツアーはそれほど試合数が多くあるわけではないので、競技をするだけで生活していくのは厳しいのが実情。プロゴルファーって、色々な人に支えてもらわないと成り立たない職業なんです。これまでも今現在も、本当に多くの人に支えてもらっています。ですから試合に出場させていただく時は、「プロアマがメイン」だと思っているんです。
僕はたまたま、良い時代にレギュラーツアーでプレーできていたので、色々な人に「横尾要」を知ってもらうことができました。その利点を生かしながら、10年先、20年先はゴルフに関わる何かをしていきたいと考えています。」


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