#31 大原洋人、CTへの挑戦

Posted on : May.03.2023

今年、2人の日本人がチャンピオンシップツアー(CT)クオリファイを目指してチャレンジャーシリーズ(CS)に臨みます。ハーレーのチームライダーである田中大貴と大原洋人。そんな中、今回はワイルドカードでCS出場権を得た大原洋人をピックアップ。怪我から復帰してさらにパワーアップした彼の声をお届けします。

100%以上の状態へ

-腰を怪我して、試合もしばらく欠場。今の身体の状態はどうですか?

「怪我は100%完治しました。怪我したあとから、身体の使い方を覚えるトレーニングをしています。前みたいに筋力アップのトレーニングをしているわけじゃないんですけど、サーフィン自体は調子良くなってきていますね。前まではやった分だけ自信をつけていた感じでしたけど、今はもっと上手く身体を使い、サーフィンしやすくする。それができるようになって、自信がついてきたっていうところです」

-身体が100%の状態まで回復したと感じたのはいつ頃ですか?

「実際には100%の状態に戻ったときでもそれを感じられなくて、100%以上の状態、前よりも良い状態になってようやくそれを実感できたんですけど、時期としてはオーストラリアへ練習に行った2月です。ボードと自分のサーフィンがマッチしている感じもしたし、波が常にある状況で繰り返しサーフィンしたときに怪我する前よりもいいサーフィンができているって感じましたね」

-筋トレをしていないということは、トレーナーの方が洋人選手の身体を見て、もう十分に筋力はあるという判断なのでしょうか?

「身体を動かすベースを作って、その上に筋肉をつけた方がいいけど、以前はサーフィンする上で動かせる範囲がそこまで広くないのにしっかりとした筋肉がついている状態だったようです。だから下のベースを広げられれば、上の筋肉をサーフィンでもっと発揮できる。もちろんベースが出来上がってくれば筋力アップもできるようになる。で、今はそろそろ筋力アップのトレーニングを入れていってもいい段階だって言われています。トレーニングを始めてからかれこれ5ヶ月目くらい経つので」

-外側から見ていると、スピードとキレが増したように感じます。

「そのためのトレーニングをしているので。今、目標としているサーファーがフィリッペ・トレドなんです。トレーナーの方はサーフィンを見たこともやったこともない人だったんですけど、その競技の特性を認識してトレーニングに落とし込んでいく形でやっていて、いろんなトップサーファーの映像を見てもらう中で、フィリッペのサーフィンが一番近づけられるということだったので。それを真似できたら一番いいですよね(笑)。だからフィリッペのサーフィンをイメージしながらトレーニング、というか身体を動かす取り組みをしています」

-2015年にUSオープンで優勝したときは、スピードと勢いのあるサーフィンで大会を制したイメージでした。そこからトレーニングを重ねて重さのあるサーフィンにシフトしたような印象を受けていたのですが、最近の洋人選手の映像を見る限り、もともとのスピーディでシャープなサーフィンを進化させているように映りました。

「ずっと同じスピードを出すというよりは、身体の使い方を変えるだけで一回一回の瞬発力や速さを出していけるという考えでやっています。そういう形の理想的なサーフィンがフィリッペなんですよね。エアーの際も身体の使い方でもっとローテーションしやすくなりますし。前までは身体を動かせる範囲以上に筋肉があったから、自分が持っている力で身体を動かしていたんです。今は原理で身体を動かしていくという考え方です。必要なときに力を出せるようにする方がスピードやキレ、パンチも出しやすい」

大原洋人のシグネジャーでもある縦回転のエアーリバース。今年はさらに完成度が増した印象

CTクオリファイへのリスタート

-CSの年間ワイルドカードがもらえたと聞きました。これは怪我での欠場が考慮された結果ということでしょうか?

「もらえたのがアジアリージョンのワイルドカードだったんですが、正直、もらえた理由はわからないです。ただ、申請をしないとワイルドカードはもらえないということがわかっていたので、一戦でも多くCSに出場できたら、と思って申請はしました。今は今年一年、CS全戦に出場できることが決まっています」

-CSのスケジュールを教えてください。

「5月1日にオーストラリアに行って、5月6日から13日までスナッパーロックス、17日から24日までナラビーンと連戦になります。そのあとは7月2日から9日まで南アフリカのバリット、7月29日から8月6日までカリフォルニアのハンティントンビーチ、10月1日から8日までポルトガルのエリセイラと続いて、10月14日から21日まで行われるブラジルのサクアレマが最終戦です」

-今年はどんな作戦を立てていますか?

「去年は何戦かCSには出たけど、自分が望んだ状態では出られなかったので、今年はより一層思いが強いです。CSだとQSのイベントよりいい波やサイズのある波で戦えるので、自信を持ってサーフィンできるかなと思います。楽しみでもあるし、今年こそはっていう思いが強いですね。特に楽しみにしている会場は、スナッパーとUSオープンのハンティントンとエリセイラ。思い出があったり、いい印象があったり、今の自分のサーフィン的にもハマりやすかったりするので。この3戦では特に結果を求めていきたいですね」

-ハワイでのCSイベントがなくなりました。

「大きい変更だなと思います。ハレイワとサンセットのイベントがCSに組み込まれていた年は、その2戦でCTに入る人がいたくらい重要な位置付けでした。自分の中では気持ちのどこかでハワイへの苦手意識が消えなかったし、特にサンセットについてはずっと苦手にしていました。今年からCTに組み込まれて、CTに入ったらもちろんサンセットの試合には出なくてはいけませんが、CSのときとは違う気持ちで挑めるとは思います。でも、まずはCSで勝ち上がるのが最優先なので、そういう意味では良かったかなと思います」

-ハワイではサーフボードのチョイスもまったく違うものになります。

「そうですね。サーフボードのチョイスもそうだし、調整や慣れるっていう意味でもそうだし、ハワイのイベントのために時間を費やさないといけない。ただ、今年は例年より早い時期にCSの全イベントが終わるので、もしCTにクオリファイできたらハワイのイベントまで長く準備時間を使えます」

より良い相棒を手に

-イベントごとに考えているサーフボードのモデルやディメンションを教えてください。

「去年スナッパーのCSに出たときは、それまでと全然違うボードで試合に出たんです。ボードのサイズもフィンも小さくして。見た目ではそれがわからなかったと思うんですけど。自分のシェイパーであるJSのジェイソンがスナッパーのローカルなので、スナッパーについてはお任せしているところはあります。ナラビーンやバリット、サクラレマのビーチブレイクに関しては、Monsta 10というモデルでいこうと思っています。この前、CSの試合でオーストラリアに行ったときに作ってもらったボードがめちゃくちゃ調子よくて。ボードのサイズは変わってないんですけど、ボリュームが増えていたんです。25L以上にリッター数が増えたことが今、すごくマッチしていますね。ボードは大きくなったのにコントロールはしやすいし、速いし、ターンも伸びるし、エアーもやりやすい。ディメンションは長さが5’8”か5’8 1/2”で、幅が18 5/16”、厚みが2 3/8”です」

-シンプルな筋トレはやっていなくてもボードのボリュームが増えても調子がいいのは、パワーではない部分でボードを押し込めているということですか?

「むしろそっちの方が今、目指しているサーフィンにより近づけていると思います。ボードが大きいとも感じないですし。波のサイズが大きかったら、もっとボードを大きくしてもいいかなって思うくらい。オーストラリアで乗っていたときはウェットがスプリングとか裸に近い状態でやっていたけど、日本に帰ってきて分厚いフルスーツで同じボードに乗っていると少しボードが小さく感じるので。特にバリットなんかは波がパンチーだから、もっとボリュームを増やしていこうかなと思っています」

-波が小さいときも同じモデルですか?

「波が小さいときはXero Gravityというモデルか、Monsta 10の違う乗り味のボードを使うかという感じです。リッター数は同じでも1本はムネ以上のときに調子が良くて、もう1本はコシ〜ハラの波でも余裕で乗れちゃう。また新しいボードを頼んだら、どんな感触のボードが届くのかわからないけど。USオープンのときに波が小さかったら、途中のタルいセクションでパンピングしやすいので、たぶんXero Gravityというモデルを使うとは思います」

勝つことを突き詰める

-これまでもCT入りを目指していましたが、まだ実現できていません。今の時点でなにが要因で、どんな改善が必要だと捉えていますか?

「何年も前から気づいていることではあるけど、やっぱり試合で毎回ヒートを勝ち上がるための練習っていうのがどこかで欠けていたのかなと思います。試合会場に行ったときの練習じゃなくて、毎日の練習のときから常に波をメイクすることや、そのときの波のコンディションでどういうライディングをしたら点数を出せるのか考えながらサーフィンをすることが大事。試合会場に行ったらそこでアジャストするだけでヒートに臨めるくらいの状態にまでコンディションを作っておかなきゃいけない。今までは練習の半分以上が自分の楽しいサーフィンのためで、半分弱は試合を意識した練習でした。でも、ずっとCTに入れていないし、去年CTにクオリファイした選手を見ても、練習から100%でそこにシフトしてやっていかないと上がれないと今は思っています。CSのレベルも上がっているし。それくらい突き詰めないとダメですよね」

-そのあたりのアドバイスはコーチからの助言なんでしょうか?

「いや、結構奥さんから言われますね(笑)。何年もQSやCSを回っていてもまだCT入りできていない状況の中、『怪我が治って100%の状態でCS回れる、やった、っていう感じなら今までと同じなんじゃない?』って。『受けたいコーチがいないなら、今まで受けたコーチに教えてもらったことを思い出して、ノートとかスマホのメモとかに残した方が記憶に残りやすいんじゃない?』とも言われましたね。前にやって自分として感触が良かったものをまたやり始めるっていうことにも取り組んでいます」

-現在のCTやCSは急激にレベルアップしていますが、その中で自分の強みを教えてください。

「なんだろう…。でも、今まで3回CTにスポット参戦して、そこで自分のサーフィンができればある程度点数がもらえるなっていう感覚はあります。あと、今取り組んでいることは、CTに入らないと披露できないかな」

-今年のCSにかける意気込みを教えてください。

「なにがなんでもトップ10に入りたい。各リージョンから限られた人しかCSに出られなくなって、戦う人数が減ったので、上位に進出するのに戦う回数も少なくなった。そこはプラスに捉えたいなと思います。もちろん簡単じゃないですけど。自分としては燃えているので、そこは見てもらえたらなって思います」

Go,Hiroto!!

大原洋人選手オフィシャルインスタグラム:https://www.instagram.com/hirotoohhara/

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