Posted on : February.10.2022
奇跡の海岸線
冬のオアフ島ノースショアは、腕に自信のあるサーファーが各国から集まるアリーナです。
わずか7マイル(約11km)の海岸線に、世界的に有名なサーフポイントが点在し、数ヶ月もの間、パワフルな波が届けられることから、「7マイルの奇跡」とも呼ばれています。 トップサーファーをも虜にするビッグウェーブがブレイクする秘密は、主にうねりの発生源と、そこからの距離、そしてハワイ諸島周辺海域の地形にあります。まず、遠く離れたアリューシャン列島付近で低気圧が猛烈に発達することによって大きな波の元となる強いうねりが生まれます。そのうねりはハワイ諸島に到達するまで、大きな島などの障害物に遮られることなく、強さを保ったまま長い距離を旅して形が整えられることに。さらに、ハワイ諸島は海底火山が噴火して出来上がった諸島で付近の海域が深いため、うねりのパワーが減退せず、海岸近くの浅瀬になってようやく一気に爆発するように割れるのです。
CT開幕戦の行方
そんな迫力ある波が割れる冬のノースショアでは、毎年いくつか有名なサーフィンコンテストが行われます。その中でも要注目なのは、2022年のCTイベントに組み込まれている「Billabong Pro Pipeline」と「Hurley Pro Sunset Beach」でしょう。
「Billabong Pro Pipeline」は世界屈指のサーフポイントであるパイプラインで開催される大会。ビーチから近い場所でチューブの波がブレイクするので観戦しやすく、波のパワーや選手たちの駆け引きなどが直に伝わってくるのが特徴です。レフト側に割れる波はパイプライン、ライト側の波はバックドアと呼ばれ、どちらの波に乗ってもスコアに繋がるため、ライトとレフトのどちらにテイクオフするのか注目しながら観戦すると楽しみが広がるはず。
パイプラインではこれまで数々のドラマが繰り広げられてきましたが、今年も一つの伝説が生まれるコンテストになりました。メンズでは、2月11日で50歳になる生けるレジェンド、ケリー・スレーターが、ハワイアンのセス・モニーツとのファイナルを制して優勝したのです。数々のタイトルを総なめにしてきたケリーですが、実に5年以上ぶりとなるCTでの勝利に、これまでの中で最も嬉しい優勝だとコメントしています。
一方、史上初開催となったパイプラインでのウィメンズのCTイベント。この記念すべき大会を制したのは、ローカルシードによるワイルドカード枠で参戦したモアナ・ジョーンズ・ウォンでした。決勝では絶対女王のカリッサ・ムーアを相手に見事なチューブライディングをメイクして、堂々の優勝。フル参戦ではないため、年間タイトル争いに絡んでくることはないでしょうが、この22歳の若者がパイプラインで成し遂げたことは、サーフィンの歴史に確かな足跡を残すことになったはずです。
オープンフェイスなサンセットの波
さて、「Billabong Pro Pipeline」に続き開催される第2戦の「Hurley Pro Sunset Beach」は、2月11日からウェイティング期間に入ります。このコンテストが行われるサンセットビーチは、パイプラインとは波の質がまったく異なり、アウトサイドから割れる長いスロープを伴ったライトの波が特徴。テイクオフからいきなりホレ上がるのではなく、テイクオフしたら波のボトムまで降り、きちんとボトムターンをして波のトップを目指す、そんなサーフィンの基礎的なマニューバースキルが要求されます。とはいえ、ここはクセのあるブレイクで、インサイドボウルと呼ばれるセクションではチューブが巻くこともあり、うねりの強さや向きを頭に入れながら波を読む力も必要になってきます。経験も重要なファクターになってくる波なのです。
そして注目したいのは選手たちが使うサーフボード。オープンフェイスな波質のため、通常より長いサーフボードが必要になります。一般サーファーの中には9フィートや10フィートのボードを使う人も。CTサーファーの場合はさすがにそこまで長いボードを使用しませんが、それでも他のサーフポイントで使うボードに比べると明らかに長い。そうなると、当然ながらボードを取り回すのも大変になります。そのことを踏まえた上で、CTサーファーたちが見せる卓越したボードコントロールは必見です。
見逃せない戦い
開幕戦となった「Billabong Pro Pipeline」ではケリーとモアナが優勝し、歴史を作りました。メンズでは、ケリーがこの勢いのまま「Hurley Pro Sunset Beach」でも好成績を残すのか、それともサンセットの波をよく知るセスやジョンジョン・フローレンスなどのローカル勢が地の利を生かすのか?
ウィメンズでは、「Hurley Pro Sunset Beach」でもワイルドカードでの参戦が決まったモアナがタイトルレースを引っ掻き回すのか、それともレイキー・ピーターソンやタイラー・ライトといった実力者たちがそうはさせまいと意地を見せるか。選手たちの気合も十分で、スリリングな波のもと、世界最高峰のサーフィンを見せてくれるでしょう。もちろんフィリペ・トレドやコナー・オレアリー、第1戦で惜しくも準優勝となったカリッサといったハーレーライダーたちの活躍からも目が離せません。
WSL公式サイト:https://www.worldsurfleague.com/
オフィシャルグッズ:https://store.hurley.jp/collections/hurley-pro