Posted on : March.18.2022
2022年前半で唯一のQS
毎年、ツアーのシステムが変更されるワールドサーフリーグ(WSL)。世界最高峰に位置づけられているチャンピオンシップツアー(CT)に参戦するための二次的なツアーとして、昨年からチャレンジャーシリーズ(CS)が新たに設けられました。さらにその下のツアーとしてクオリファイイングシリーズ(QS)があって、全部で3段階のツアー構造となっています。つまり、一番上のカテゴリーであるCTに上がるには、まずQSを勝ち上がり、さらにCSでも上位進出する必要があるのです。
2022年に日本で開催されるQSは一戦のみ。それが3月21日から27日の日程で行われるアジアオープンです。新型コロナウイルスの影響によりWSLは変則的なリージョン分けを強いられていて、日本とインドネシアでの検疫措置が続いていることから、アジアについても地域をサブリージョンに分割し、日本とインドネシアでそれぞれコンテストを実施されることに。そのためこのアジアオープンには日本人しか参加できません。その中からCSに進出できるのは男子3名、女子4名で、その枠を獲得しようと日本人トッププロたちが本気でしのぎを削ることになります。アツい戦いになることは必至でしょう。
勝敗を左右する自然条件
大会会場となるのは、2020年東京大会も行われた千葉県の釣ヶ崎海岸、通称「志田下」です。一年を通じてコンスタントに波が立つ場所として、またそれゆえに多くのトッププロたちが腕を磨く道場として有名なサーフスポット。試合期間となる3月下旬も例外なくある程度のサイズが見込めるでしょう。波質はビーチブレイクながらパワーがあり、時にはホレてチューブをも形成します。
ただし、この時期に千葉北エリアでこれほど大きな大会が行われるというのはある意味異例です。これは5月にオーストラリアで始まるCS初戦から逆算した上でのスケジュールになるのですが、春は強い風が吹く季節でもあるため、波のコンディションが風によって大きく変化することが予想されます。風の強弱はもちろん、風向きによっても例えばレギュラーフッターがエアをしやすいコンディションになったり、逆にグーフィーフッターがマニューバーで勝負せざるを得なかったりします。参戦するプロサーファーたちは、その日の風に対応する能力が求められると言っていいでしょう。
もう一つ、今回のアジアオープン出場者たちを悩ませると予想されるのが海水温。この時期の志田下は、まだまだ冬の装いが必須とされる海水の冷たさです。セミドライ相当のウェットスーツ着用は当然として、基本的にはブーツも必要になってくるでしょう。選手によっては冷たい海水を我慢してブーツ未着用で参戦することもあり得ますが、それでも温かい海で競技するのとは比べものにならないくらい体は動かないものです。そのことを想定して、事前段階からノーブーツで練習している選手もいます。そのあたりの戦略や準備も見どころの一つと言えるので、ライブ配信を見る際は注目してみてください。
アジア枠を狙うHurleyライダーたち
男子の有力選手の一番手に位置するのが、Hurleyライダーで東京大会日本代表の大原洋人です。スピーディかつドライブの効いたサーフィンは、参戦するサーファーの中で抜きん出ていると言っていいでしょう。この洋人を軸にして試合が展開していくのは間違いありません。そこに若手筆頭株のHurleyライダーである岩見天獅がどう絡んでくるのか注目です。特にここ最近の天獅は成長著しく、他のコンテストでもトッププロたちを次々と押し退けて上位進出を果たしています。今回のアジアオープンでも活躍を期待したいところです。また、同じくHurleyライダーでコンペティティブなサーフィンには定評のある田中大貴は、安定した戦いぶりでCS進出の枠を狙ってくるでしょう。近頃はライディングがさらにパワフルになってきているので、その力強さを試合の中で遺憾なく発揮できれば、大貴を含めたHurleyライダー3人が全員CS進出というのも現実になってきます。
女子に関しては、真庭彩がオーストラリアから一時帰国して出場の予定。彩は現地で行われたWSLジュニアの大会でも優勝するなど、オーストラリア移住後に急激な成長を見せています。今回のアジアオープンでも、志田下の冷たい海に対応できればダークホース的な存在として一枠を獲得する可能性は十分です。
アジアオープンは日本人サーファーにとってCTクオリファイのために越えなければならない最初の登竜門。海の中でのポジション争いやプライオリティの活用も含めて、目が離せません。
なお、今回のアジアオープンはQSのみならず、プロジュニアイベントも同時開催されます。20歳以下の次世代サーファーたちが参戦し、激しい戦いを繰り広げます。さらに3月19日と20日には、アジアオープンに先駆けてチャレンジカップも開催されます。これは、QSやプロジュニアを目指す16歳以下や12歳以下の選手に向けたコンテスト。ジュニア世代やキッズたちの真剣な戦いにも熱い視線を送ってみてください。